コラム

見つけよう!あなた自身の<輝ける中小企業>

「Alice in Wonderland」という物語をご存じでしょう。アリスは不思議の国で、いろいろな経験をしますね。
 この世の中には、不思議な中小企業があふれています。ふつうの常識、大企業の常識では考えられない制度をとりいれている会社が、ごまんとあります。

中小企業は夢と希望のワンダーランド

 あなたが社会人への階段を上がるとき、突破しなければいけないもの、それは就職試験です。大企業では、ぱっぱっぱっと当落を決める傾向があります。おおくの希望者があつまるので、あるていどは仕方のないところです。
 ところが、中小企業のワンダーランドには、どうにかして就活生を内定にみちびきたいと、がんばってくれる会社があります。
 たとえば、東京にある科学者集団「リバネス」。学校への「出前実験教室」をしたり、農業、生物、ロボットなどの事業をしたりする会社です。
 この会社で内定を決めるのは、社長ではありません。就職を志望する学生は、全社員のまえでプレゼンをして、拍手がおこれば内定です。プレゼンの内容を決めるのは、学生だけではありません。社員が親身になって考えてくれるのです。社員は本気になって、学生の内定をとりにいくのです。
 さて、あなたは無事に内定をもらいました。でも、自分は本当に会社員としてうまくやっていけるのだろうか。不安が募ってきます。
「大阪ケイオス」なら、あーんしんです。ここは大阪のものづくり企業20社ほどがあつまってつくった会社なのですが、入社まえ、各社の内定者をあつめてキャンプをします。雪山を歩き、座禅をくみ、さらに、テントのなかで各社の社長と語り合います。きっと、不安は冬の空のかなたに消えることでしょう。

大企業的「減点主義」では 仕事が回らない

 さて、あなたは仕事をはじめました。実力をいかんなく発揮していきます。ところが、手がけたプロジェクトが大失敗、会社に大損をさせてしまいました。
「左遷かあ」「出向かあ」
 それは、大企業の発想です。各地に支社や営業所があるから、左遷、という言葉がうまれるのです。または、子会社などのグループ会社がたくさんあるから、出向、という言葉になるのです。中小企業の場合、そんな発想はでてきません。だって、各地に拠点をもっているわけではありませんから。
 でも、何らかの形でけじめをつけなければなりません。
 大阪の堺市というところに、「太陽パーツ」というものづくりの会社があります。この会社のけじめのつけ方は、これです。
「大失敗賞として、金一封をつけて表彰する」
 大失敗をするということは、果敢に挑戦した結果である。この会社では、こう考えるのです。ちなみに、社長も受賞しています。

自分を見失わない働き方を探そう

 さて、会社員生活にも慣れたあなたに、お得意さまができました。この取引先からの仕事がなければ、あなたの会社の経営はたいへんなことになってしまいます。始末のわるいことに、この取引先が、やたらと威張りちらすのです。
 あなたはおそらく、我慢して従うことでしょう。
 群馬県にあるバネ会社、中里スプリングはちがいます。そんなやつとのつきあいは願い下げだと、取引先との縁を切ってしまうのです。
 ここの社長さんはいいます。
 「みなさんは、好きなクラブ活動をして、好きな人と友だちになり、恋愛をしてきたはずです。なぜ、仕事だけ、好きでもない人とつきあわなくてはいけないんですか。我慢しなくてはいけないんですか」
 大企業ではたらくことと、中小企業ではたらくこと。その大きな違いは、あなたという人間の存在感です。
 中小企業の社長は、たいてい、たいへんな苦労をしています。たとえば、東京スカイツリーの地元にある、ものづくり企業「浜野製作所」。8千㍍の海の底をいく探査機「江戸っ子1号」プロジェクトの中核企業です。ここの社長は、火事で会社のすべてを失い、ゼロからスタートした人です。だから、頼まれたらどんなものでもつくります、たとえ一品でも。そんな社長と、毎日のように顔をあわせるのです。あなたのモチベーションは上がります。
 社長にとっても、あなたは大切な人になっていきます。2008年秋、リーマン・ショックがおこりました。名古屋のものづくり企業「エイベックス」のトップは、社員たちに宣言しました。「雇用をぜったい守ります」と。
 中小企業に就職することになった、あなた。「幸福曲線」のスタートは、下の方かもしれません。でも、入社したら、つぎつぎに仕事を任され、管理職、役員へとなっていく。幸福曲線は上がりつづけます。10年、いや20年かかるかもしれません。幸福曲線は、きっと逆転しているはずです。
 あなたは、あなたの力で勝負するのです。カッコいいなー。

      
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朝日新聞編集委員(中小企業担当)
中島 隆
<略歴>福岡県出身。1986年朝日新聞入社。鹿児島支局、経済部記者、名古屋報道センター次長、東京生活部次長、「ニッポン人脈記」チームなどを経て、2012年4月から専門分野を取材する朝日新聞編集委員に。全国の中小企業の現場を巡っている。大学時代は応援部、いまは中小企業の応援団(自称)。著書に「魂の中小企業」(朝日新聞出版)、「女性社員にまかせたら、ヒット商品できちゃった」(あさ出版)。朝日新聞デジタルでコラム「魂の中小企業」連載中。